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「IoT」ってどんな技術? 先進的な活用事例もご紹介!

日本語で「モノのインターネット」と訳されるIoTは、すでに私たちの生活に身近なものとなっています。
たとえば、人間の声に反応してAIが情報検索などをするスマートスピーカーも、IoT機器のひとつです。
外出先から、照明やエアコンをスマートフォンで操作できるIoT家電も普及しつつあります。

さらに、IoTは消費者向けの商品だけでなく、さまざまな分野で広く活用されています。
医療や物流、農業、航空、まちづくりなど、IoTの活躍の場は多岐に渡り、大きな可能性を秘めた技術です。

この記事では、普及が進んでいるIotの仕組みや技術に関する基本知識、IoTを活用した先進的な取り組みについて紹介します。

IoTとは? IoT技術の基本知識

IoTとは、「インターネット・オブ・シングス(Internet of Things)」の頭文字を取った言葉で、「モノのインターネット」とも訳されています。
テレビやスピーカー、カメラなど、生活のなかにあるさまざまな「モノ」がインターネットとつながり、データの収集や情報のやりとりをするのがIoTの概念です。*1
総務省が発行している情報通信白書によると、IoTのコンセプトは「自動車、家電、ロボット、施設などあらゆるモノがインターネットにつながり、情報のやり取りをすることで、モノのデータ化やそれに基づく自動化等が進展し、新たな付加価値を生み出すというもの」とされています。*2

インターネットに接続されたIoT機器は、直接操作をしなくても、ネットワークを通じて遠隔からリアルタイムに監視・制御することができます。
さらに、IoTによって、医療や自動車、家電などの異なる分野の機器が相互に連携することで、新しいサービスを提供できるようになります。
IoTは機器がネットワークにつながって新しい価値を生み出すだけでなく、IoT機器同士がつながることで新たな価値を生み出す「System of Systems(システムオブシステムズ」の特性も持っています。*3

情報処理推進機構(IPA)が作成した「IoT開発におけるセキュリティ設計の手引き」では、IoTの全体像を以下のように定義しています。(図1)*4


図1:IoTの全体像
出所)IPA「 「IoT開発におけるセキュリティ設計の手引き」を公開」
https://www.ipa.go.jp/security/iot/iotguide.html

この全体像によると、IoTは、「サービス提供サーバ・クラウド」、ルーターやスマートフォンなどの「中継機器」、制御システムやスマートハウスなどの「システム」、情報家電や自動車などの「デバイス」、ゲーム機などの「直接相互通信するデバイス」の5つの構成要素から成り立っています。

そしてIoTに欠かせない技術のひとつが、センサーと呼ばれる検知器で対象を計測し、定量的な情報を取得するセンシング技術です。

IoTはセンサーによって画像や音声、温度、湿度などのさまざまなデータを収集し、クラウドへ集約することでデータを分析することができます。(図2)*5


図2:IoT 機器(センサー)からクラウド (サーバー) へのデータの集約集積イメージ
出所)宮城県「 「IoT」分野の現況及び動向」p.16
https://www.pref.miyagi.jp/documents/10375/815906.pdf

センシング技術によって、人間が五感で感知可能な光やにおい、味覚などを定量的に測定することができます。
さらに、人間が感知することができない電波や音の強さ、二酸化炭素量などのデータも取得することができます。*5

IoTの導入状況と成長が見込まれている分野

さまざまな分野で急速に広がりつつあるIoTは、世界ではどのくらい普及しているのでしょうか。

次の図3は、世界のIoTデバイス数の推移と将来予測です。*6


図3:世界のIoTデバイス数の推移と将来予測
出所)総務省 令和6年度版 情報通信白書データ集「41. 世界のIoTデバイス数の推移及び予測」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r06/html/datashu.html#f00246

世界のIoTデバイス数は増加傾向にあり、今後も伸び続けていくことが予測されています。
カテゴリ別に見ると、「医療」、「コンシューマー」、「産業用途」、「自動車・宇宙航空」などの分野で成長が見込まれています。
また、すでに多くの割合を占めている「通信」分野にはスマートフォンなどの通信機器が含まれますが、すでに市場が飽和状態であることから、他分野と比較すると成長がゆるやかであると予測されています。*7

次の図4は、企業におけるIoT・AI等のシステム・サービスの導入状況です。*8


図4:企業におけるIoT・AI等のシステム・サービスの導入状況
出所)総務省 令和6年度版 情報通信白書データ集「44. 企業におけるIoT・AI等のシステム・サービスの導入状況」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r06/html/datashu.html#f00351

2023年の時点で、IoTやAIなどのシステム・サービスを導入している企業の割合は16.9%となっており、導入予定の企業を含めると28.1%となっています。
企業がIoTやAIを通じてデータを収集、解析する目的としては、「効率化・業務改善」がもっとも多く、「顧客サービス向上」や「事業の全体最適化」が続きます。*8

社会ではいたるところでIoT技術が活用されている!?

IoT技術は、医療、物流、製造業、建設、農業、まちづくりなど、さまざまな分野で活用されており、業務効率化や利便性向上だけでなく、新たな付加価値を生み出しています。

院内での感染拡大を防ぐIoT技術

医療・福祉施設で使用される情報・通信システムの専門メーカーであるケアコムでは、IoT技術を活用し、手指衛生モニタリングシステムを開発しています。

このシステムでは、消毒剤に設置されたICタグから、手指衛生を実施したスタッフや実施した場所、時間を特定することで、モニタリングを実施することができます。
「いつ」「どこで」「だれが」手指衛生を実施したのか把握できるため、リアルタイムでフィードバックすることが可能です。*9

このシステムでは、個人携帯ポンプと据え置きポンプに設置されたセンサーが常時位置情報を発信しており、ポンプ押下時に信号が発信されます。(図5)*10


図5:手指衛生実施の検出方法
出所)総務省「医療分野におけるIoT活用事例のご紹介」p.24
https://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/ele/medical/lecture/202306_03.pdf

据え置きポンプが使用された場合は、携帯ポンプを所持しないスタッフが装着するセンサーの位置情報から、一番近いスタッフが使用したと判定します。

IoTによって得られる情報から手指衛生の遵守率向上を効果的にサポートし、院内での感染リスク低減に貢献するシステムです。

IoTの位置情報によって物流を見える化

ヤマトシステム開発会社では、IoT技術を活用したセキュリティmoduleサービスを展開しています。

このサービスは、試験問題や医薬品など、高価値物品や重要書類の輸送を想定して設計されており、輸送の透明性を確保し、セキュリティを強化することが目的です。
荷物を施錠する南京錠型のデバイスに通信機能を搭載することで、リアルタイムで荷物の位置情報を把握することができます。(図6)*11


図6:セキュリティmoduleサービスの利用イメージ
出所)スマートIoT推進フォーラム「IoT活用で輸送に関わる不安を解消する-ヤマトシステム開発の「セキュリティmoduleサービス」」
https://smartiot-forum.jp/iot-val-team/iot-case/ysd

鍵の開錠可能者も限定することができるうえに、鍵の開け閉めの履歴もログとして蓄積されるため、輸送に関わる不安を解消することができます。
位置情報や開錠履歴、利用者情報をデータで管理することで、紛失や盗難のリスクを最小限に抑えるシステムです。

街をきれいにするIoTスマートゴミ箱

街の美化や資源のリサイクルに取り組むベンチャー企業である株式会社フォーステックは、海外で導入が進んでいるスマートゴミ箱を日本に導入しました。

「IoTスマートリサイクルボックスSmaGO(スマゴ)」は、ゴミ回収の効率化、費用削減を実現するスマートゴミ箱です。

SmaGOでは、ゴミの量を赤外線センサーでセンシングし、常にクラウドに送信することで、ゴミの堆積状況を管理・分析することができます。
ゴミ箱が満杯に近づくと管理者にアラートが発信されるため、ゴミがあふれる前に回収でき、街の美化を保つことができます。(図7)*12


図7:SmaGOの管理機能
出所)スマートIoT推進フォーラム「街と企業と人々が一体となって参加する環境活動 - フォーステックのIoTスマートゴミ箱SmaGO」」
https://smartiot-forum.jp/iot-val-team/iot-case/case-forcetec

スマートゴミ箱の堆積状況分析・予測機能やエリア別の分析機能によって、ゴミがたまっているゴミ箱から効率的にゴミ回収をすることができます。

おわりに

業務の効率化やコスト削減などを実現するIoTは、活用分野も多岐に渡り、社会のいたるところで活躍しています。

迫り来るデジタルシフトの波によって、世界のIoT機器数は今後も増加していくことが予測されています。
今後も、IoT技術を活用した革新的なサービスが次々と登場してくるかもしれません。

参考文献

石上 文

広島大学大学院工学研究科複雑システム工学専攻修士号取得。二児の母。電機メーカーでのエネルギーシステム開発を経て、現在はエネルギーや環境問題、育児などをテーマにライターとして活動中。

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