自動運転は、現代の社会が抱えるさまざまな課題を解決し、多くのメリットをもたらします。
自動運転の直接的な効果として、渋滞の解消・緩和、交通事故の削減、環境負荷の低減、高齢者などの移動支援、運転の快適性の向上、国際競争力の強化などがあります。(図3)*6

図3:自動運転の直接的な効果(イメージ)
出所)国土交通省「オートパイロットシステムの実現に向けて」p.14
https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/autopilot/pdf/torimatome/sankou.pdf
自動運転のメリットとしてまず挙げられているのが、運転支援システムの導入による渋滞の解消・緩和です。
運転支援システムによって、交通量が多い道路でも、自動で最適な車線を選んだり、適切な車間距離を保つことで、車の流れを円滑化できます。
ACC(自動で車速や車間制御を行う機能を持った装置)導入を仮定したシミュレーションでは、ACC車両混入率30%で、約50%の渋滞が削減できると試算されています。(図4)*6

図4:ACC導入による渋滞削減効
出所)国土交通省「オートパイロットシステムの実現に向けて」p.15
https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/autopilot/pdf/torimatome/sankou.pdf
さらに、自動運転による交通事故の大幅な削減も期待されています。
2023年に発生した自動車関連の交通死亡事故は2,288件、そのうち自動車が当事者の事故は88.3%を占めています。(図5)*7

図5:自動車関連の交通死亡事故に占める第1当事者の割合
出所)デジタル庁「AI時代における自動運転車の社会的ルールの在り方について」p.3
https://www.cao.go.jp/consumer/iinkai/2024/442/doc/20240807_shiryou1-1.pdf
これらの事故には、わき見運転やブレーキとアクセルの踏み間違えなど、ドライバーのヒューマンエラーも含まれています。
これまで、人間がおこなってきた運転時の「認知・予測・判断・操作」を機械が代替することで、人的ミスによる事故を大幅に減らすことができると考えられています。
また、バスやタクシーなどの自動運転移動サービスが導入されることで交通分野への直接的な効果だけでなく、観光や医療、教育など他分野への波及効果も見込まれています。(図6)*8

図6:自動運転移動サービス導入の価値
出所)国土交通省「自動運転移動サービス社会実装・事業化の手引き」p.65
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001751816.pdf
自動運転移動サービスは、少子高齢化が進んでいる地域や、公共交通の空白地域での新たな交通手段としての役割も期待されています。
路線バスをはじめとする公共交通のドライバーの高齢化や人手不足が深刻化している岩手県釜石市では、2024年8月から自動運転バスの実証実験をおこなっています。
この実証実験は将来的な社会実装を見据えたもので、自動運転技術の立証や社会受容性向上を目的としています。(図7)*9

図7:実証実験に使用されたエストニア製の自動運転バス
出所)釜石市「自動運転バス実証実験の実施について」p.2
https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2020121800035/file_contents/siryou2.pdf
実証実験では、駅やバス停、スーパーマーケット、病院などの生活に必要な施設へアクセスしにくく、比較的高齢化が進んでいるエリアでおこなわれました。
新たな移動手段として自動運転バスが導入されれば、生活の足の確保につながります。
今後、日本の人口は急速に減少していき、2050年には全国の居住地域の半数が人口が半減するという予測もあります。
すでにドライバー不足は進んでおり、厚生労働省の調査によると、自動車運転手の有効求人倍率は全就業平均の2倍になっており、人手不足は深刻な状況です。(図8)*10

図8:自動車運転業の人手不足
出所)デジタル庁「モビリティ・ロードマップ 2024」p.4
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/2415ad00-6a79-4ebc-8fb1-51a47b1b0552/53e634ee/20240621_mobility-working-group_main_01.pdf
住民の高齢化に加え、高齢ドライバーの免許の自主返納もある程度進んでいることから、生活に必要な公共交通機関を維持していくことが困難になると考えられます。
ドライバー不足を解消する自動運転バスは、地域の暮らしを支える重要な交通手段の一つになるかもしれません。