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ロボットタクシーも上陸!日本の自動運転はどこまで進みどう展開していくのか

日本では2023年の道路交通法改正によってレベル4の自動運転が解禁され、特定の条件下での公道走行が認められています。

それに伴い、レベル4の自動運転移動サービスが事業化され、路線バスも運行していますが、レベル4の自家用車が高速道路を走るまでにはまだもう少し時間がかかりそうです。

一方、2025年には、アメリカで既に商用化されているレベル4の自動運転タクシー「ウェイモ(Waymo)」が日本に上陸し、テスト走行を開始しました。

トヨタ自動車はそのウェイモと次世代型個人所有車(POV)への技術展開も含めた提携を始めました。他の自動車メーカー各社も自動運転技術の共同開発を積極的に進めています。

日本の自動運転はどこまで進んでいて、今後どのような展開をみせるのでしょうか。
最近の動向を探ります。

商用車の分野では「レベル4」の自動運転サービスがすでに実現

日本では2023年4月に改正道路交通法が施行され、特定自動運行が制度化されました。このことによって、レベル4に相当する、限定地域での遠隔監視のみの無人自動運転移動サービスが実現可能になりました。*1
では、進捗はどうでしょうか。


図1 各レベルの自動運転の進捗
出所)国土交通省「社会課題の解決に資する自動運転車等の活用に向けた取組方針」p.3
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001623770.pdf

自家用車は、2021年3月にホンダが高速道路でのレベル3自動運転車「レジェンド」を世界で初めて販売開始しています。

2023年5月には、福井県永平寺でレベル4の無人自動運転移動サービスが事業化されました。
翌年の2024年12月には、レベル4の路線バスの運行が全国で初めて松山市で始まりました。*2
さらに、2025年2月、茨城県日立市で、国内初の中型バスでのレベル4自動運転による運行を開始しました。*3

このように、レベル4の自動運転は移動サービス分野ですでに商用化されています。
バスやタクシーは、営業費に占める運送人件費の比率が高く、無人化の効果が大きいため、早期に普及することが見込まれています。*4

ただし、自動運転タクシー(以下、「ロボットタクシー」)に関しては、日本はアメリカや中国に遅れをとっています。このことについては、後で詳しくみていきます。

一方、物流分野のトラックは旅客輸送よりも収益力が高いものの、長距離のインフラ整備が必要なため、2030年代から本格的に普及するものとみられています。

急成長する自動運転車の市場規模

世界の自動運転車の市場規模は、2021年に240億ドルを超えました。市場は今後も成長し、2026年には約620億ドルの規模に達し、2021年の約2.5倍になると見込まれています(図2)。*5


図2 自動運転の市場規模の推移(*がついている年は予測)
出所)総務省「令和6年版情報通信白書 特集② 進化するデジタルテクノロジーとの共生」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r06/html/nd132300.html

このように急速に拡大する市場への参入に向けて、現在は各国が自動運転技術・サービスの開発にしのぎを削っています。

ロボットタクシーをめぐる動向

現在、注目されているロボットタクシーの動向についてみていきましょう。

アメリカと中国では、ロボットタクシーが商用化され、既に運行しています。
一方、日本はニーズが高いのにもかかわらずこの分野で遅れをとっているため、政府は日本における自動運転システム開発を加速させ、世界と戦える自動運転サービスの確立を目指しています。*4

ロボットタクシーの重要性

国がロボットタクシーの開発に注力するのはなぜでしょうか。

現在、日本では高齢者を中心に運転免許を返納する人が増加し、免許返納者数は毎年40万人を超えるペースで推移しています。
その一方で、免許返納者の「足」となるタクシーの運転手数は年々減少し、2013年からの8年間で35%も減っています(図3・左図)。


図3 免許返納者数とタクシー運転手数の推移(左図)・MaaS車両の普及予測(右図)
出所)経済産業省「モビリティDX検討会自動運転移動・物流サービス社会実装WG「RoAD to the L4プロジェクト推進委員会合同会議 事務局資料」(2024年3月15日)p.10
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/automobile/jido_soko/pdf/r502_syakaiwg_jimukyokushiryou.pdf

こうした状況を背景に、乗用車型ライドシェアなどのサービスとして利用されるMaaS車両は、2035年には58万台を超え、タクシーの代替となり得る自動運転レベル4のMaaS車両であるロボットタクシーも17,000台程度にまで増えると予測されています。

「ウェイモ(Waymo)」の日本上陸

2025年4月、アメリカのアルファベット傘下の自動運転企業「ウェイモ」が日本に上陸しました。*6
タクシーアプリを展開するGO、東京最大手のタクシー会社である日本交通とパートナーシップを締結しての参入です。

ただすぐに運行するわけではありません。まずは自動運転技術を東京の公道に適応させるために、4月中旬から日本交通の乗務員が運転するウェイモの自動運転車両を、港区、新宿区、渋谷区、千代田区、中央区、品川区、江東区でテスト走行しつつ、さまざまなデータを収集しています。

ウェイモの車両が搭載する完全自動運転システムWaymo Driverは、AIと一連のセンサーを利用して、人が運転席にいなくても自動車を安全に走行させることができます。*7


図4 Waymo Drive
出所)Waymo Japan「新たな旅を、東京で」
https://waymo.com/intl/jp/waymo-in-japan/

Waymo Driverによるサービスを新たなエリアで開始する前には、その地域を詳細にマッピングする必要があります。マッピングはレーンマーク、一時停止標識、縁石、横断歩道まで細部にわたります。*8

こうして作成したオリジナルの地図を、リアルタイムでのセンサーデータとAIによるデータと比較することで、常に正確な位置を把握します。

ウェイモは現在、サンフランシスコやロサンゼルス、フェニックス、オースティンなどの合計1,200平方キロメートルを超える人口密度の高い都市で、毎週160万キロメートル以上走行し、数十万組もの顧客にサービスを提供しています。*7

ウェイモは、運行している都市で、人間が運転する場合と比べて負傷を伴う衝突を78%削減したと発表していますが、事故が皆無というわけではありません。これまで、道路上のチェーンやゲート、電信柱などの障害物との軽微な衝突が発生し、その度に自動運転車両をリコールしてソフトウェアをアップデートしています。*9

自動運転をめぐって活発化する提携

現在、自動運転の分野では、海外も含めた他企業、他業界との提携が活発化しています。
日本の自動車メーカーの動向についてみていきましょう。

次世代型個人所有車(POV)への技術展開も見すえた提携

トヨタ自動車(以下、「トヨタ」)とウェイモは2025年4月29日、自動運転技術の開発と導入の加速に向けた協業について予備的な合意に達したと発表しました。*10

今回の協業は、トヨタのモビリティ技術部門「ウーブン・バイ・トヨタ」も参画し、新たな自動運転車両プラットフォームの共同開発を目指します。
また、ウェイモの自動運転技術とトヨタの車両開発における知見を組み合わせ、次世代型個人所有車(POV:Personally Owned Vehicle)への技術展開も検討します。

ウェイモが大手自動車メーカーと提携するのはこれが初めてではありません。
これまでにも、ジャガーや現代自動車、中国のジーカー(Zeekr)と提携してきましたが、POV向けの展開に関して自動車メーカーとの協業が公表されるのは今回が初めてで、今後の動向が注目されます。

ウェイモにとってトヨタとの提携は、世界各国に広範な販売網をもつトヨタとの協業を通じて、中国勢との競争で優位に立とうとする思惑があるためとみられています。*11
また、ウェイモは多額の開発費のために赤字が続いているといわれ、トヨタとの提携で、財務負担を軽減する狙いがあるという見方もあります。

ロボットタクシーは、巨額の投資を回収するビジネスモデルが海外でもまだ確立していないため、競争の途上なのです。*4

一方、トヨタにとっては、ウェイモのもつ膨大な蓄積データを活かすことで、コストを抑えながら自動運転技術の開発に取り組めるというメリットがあります。*11

活発化する他企業・他業界との提携

この他にも、日本の自動車会社は、他業界も含めさまざまな企業との提携を行っています。

特にトヨタは提携の動きが活発です。*11
2024年、NTTと次世代の運転支援システムの共同開発を行うことを発表し、2025年1月にはアメリカの半導体大手のエヌビディアから自動運転車の開発に欠かせない高性能半導体の供給を受けることが決まりました。
また、中国のスタートアップ「小馬智行」(ポニー・エーアイ)と自動運転車の共同開発も進
めています。

ホンダは2025年1月、高性能の半導体を開発するために、半導体メーカーのルネサスエレクトロニクスと提携したことを発表しました。

日産自動車も2025年4月、イギリスのスタートアップ、ウェイブと提携し、AIを活用した自動運転技術の共同開発を進めています。*10

スズキも2024年6月、日米イノベーションアワードで新興リーダー賞を受賞したことのある国内スタートアップ、ティアフォーとの連携を発表し、小型モビリティ分野における自動運転の実用化を目指しています。

おわりに

日本における自動運転技術の進展は、移動サービス分野での「レベル4」の実現によって着実に進んでいます。
ただ、ロボットタクシーに関してはアメリカや中国に遅れをとっています。

自動運転をめぐっては、今後ますます拡大していくとみられている市場への参入に向けて、国際的に熾烈な競争が繰り広げられています。
自動運転は多様な技術やデータが必要なため、国や業界を超えた提携も加速しています。

そんな状況のなか、トヨタは2025年に日本に上陸したウェイモと提携し、次世代型個人所有車の開発を視野に入れるなど、さまざまな企業との提携を進めています。
ホンダ、日産、スズキも国内外のスタートアップなどと提携し、自動運転技術の開発に向けて積極的な動きを見せています。

今後、これらの協業がどのような成果を産み出すのか、目が離せません。

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横内美保子

博士(文学)。総合政策学部などで准教授、教授を歴任。専門は日本語学、日本語教育。
高等教育の他、文部科学省、外務省、厚生労働省などのプログラムに関わり、日本語教師育成、教材開発、リカレント教育、外国人就労支援、ボランティアのサポートなどに携わる。
パラレルワーカーでもあり、ウェブライター、編集者、ディレクターとして分野横断的な取り組みを続けている。
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