2024年4月に明治大学初のベンチャー「ポル・メド・テック」などのチームが発表した技術は、「異種臓器移植用ブタ」の国内生産に初めて成功したというものです*3。
ブタからの臓器移植はアメリカでは2021年から始まっており、もはや「他人」を超えて「異種」からの移植ということになります。
それを、遺伝子操作によって人体に移植した際の拒絶反応を防ぐという手法です。
「ポル・メド・テック」などのチームは、アメリカの企業から遺伝子改変ブタ細胞を輸入し、クローンのブタを作ることに成功しました。
数ある動物の中でもブタが選ばれたのは、臓器の大きさがヒトに似ていること、飼育が容易であること、繁殖期間が短いこと、かつ一度に多数の子を出産するので効率的、という利便性があるためです*4。
遺伝子操作を施したブタからの世界初の心臓移植は2022年1月にアメリカで行われています*5。
末期症状の心臓疾患と診断され、生命維持装置で寝たきりだった57歳の男性に対して行われた移植手術ですが、術後約2か月にわたって、移植された心臓は男性の体内で機能し続けたということです。
もちろんこの手術では、男性の合意を得ています。
男性は術後に、自宅ではなかったものの家族と過ごす時間も得られたということです。
「もし、こんな実験的な手術を受けなければ、男性はもう少しでも長く生きられたのでは?」
そういった考え方も出てくるかもしれません。
しかし移植が男性自身の決断であれば、それは他人がとやかく言うことではないのかもしれません。
ただ、明治大学によれば、近年の日本では、臓器移植の希望者のうち実際に移植を受けられるのは約3%にすぎないといいます*3。これも現実です。
患者の選択肢を増やすというのは、医療のひとつの在り方でしょう。