完全自動運転はレベル5ですが、自動運転はこれまでどのように進んできて、現在どこまで進んでいるのでしょうか。
まず、日本の状況をみてみましょう。(図2)。*5
図2 各レベルの自動運転の進捗
出所)国土交通省「社会課題の解決に資する自動運転車等の活用に向けた取組方針」p.3
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001623770.pdf
図2のレベル1「一方向だけの運転支援」とは、(1)ステアリング(ハンドル操作)による横方向の車両運動の制御、(2)加速・減速による縦方向の車両運動の制御の、どちらか一方に関する運転支援を指します。*6
このうち(2)の縦方向の車両運転制御は、2003年6月、ホンダが4代目「インスパイア」に世界初の「追突軽減ブレーキ」を搭載したのを皮切りに普及し、「衝突被害軽減ブレーキ」は2019年時点で9割を超える新車に搭載されていました。*7, *5
この「衝突被害軽減ブレーキ」は2021年11月以降にフルモデルチェンジをした新型車を対象に、現在、搭載が義務づけられています。*8
次に、レベル2の「縦・横方向の運転支援」とあるのは、上の(1)と(2)の両方に関する運転支援です。
これに関しては2019年7月に、日産が高速道路をハンズフリーで走行できる「プロパイロット2.0」を搭載した「スカイライン」を発売しました。一車線内のハンズオフ走行と、分岐や追い越しの車線変更支援を実用化したのは世界初です。*9
また、全国各地で、レベル2相当の自動運転移動サービスの実証実験が進んでいます。*5
ここまでの運転主体は「運転者」ですが、レベル3からの運転主体は「システム」です。*6
「レベル3」は特別条件下でシステムが自動運転を行いますが、システムの介入要求があった場合に運転者が適切に応答し、安全確保することが想定されています。
2021年3月、ホンダは自動運行装置「トラフィックジャムパイロット」を搭載し、世界初となるレベル3に対応した新型「レジェンド」を発売しました。*10
次の「レベル4」は特定条件下での完全自動運転を指します。*5
日本では、道路交通法の改正により2023年4月からレベル4の自動運転が可能になりました。*3
このレベルの取り組みとしては、2023年5月に福井県永平寺町で、無人自動車運転移動サービスが開始されました。
また、政府は、高速道路でのレベル4を2025年を目途に実現するという目標を掲げています。
次に海外の自動運転を活用した移動サービスの状況をみてみましょう。
まず、レベル2のサービスには、ドイツで2020年から開始されたミュンヘン市内での有人タクシーの運行、オランダで2016年から開始された特定経路でのバスの運行が挙げられます(図3)。*11
図3 海外の自動運転を活用した移動サービスの状況
出所)国土交通省「自動運転の実現に向けたインフラ支援について」p.3の図から抜粋
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001596165.pdf
また、アメリカや中国では、広範囲なエリアでレベル3、4のタクシー、バスが、運転手なしで運行しています。
ここで、アメリカの投資と事故発生についてみてみましょう。
アメリカでは自動運転開発に膨大な金額が投資されています(図4:左図)。*11
図4 自動運転開発への積算投資額(左図)と自動運転車両の走行距離・事故発生状況(右図)
出所)国土交通省「自動運転の実現に向けたインフラ支援について」p.5
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001596165.pdf
たとえばアメリカのCruise社への累積投資額は、日本企業のティアフォーへの投資額の約66倍に上ります。
こうした資金力を背景にアメリカでは自動運転による総走行距離を伸ばしていますが、その一方で、走行中の事故も発生しています(図4:右図)。
こうした状況から、日本での実道での実証実験にあたっては、企業戦略やリスクマネジメントが重要であることが指摘されています。