公正取引委員会は、以下のような見解を示しています。*5
● 自習競争減殺の観点から:発注者(使用者)が、営業秘密等の漏洩防止の目的のために合理的に必要な範囲で秘密保持義務または競業避止義務を課すことは、直ちに独占禁止法上問題となるものではない。
● 競争手段の不公正さの観点から:発注者(使用者)が役務提供者(労働やサービスを提供する人)に対して義務の内容について実際と異なる説明をしたり、あらかじめ十分に明らかにしないまま役務提供者が秘密保持義務や競業避止義務を受け入れている場合には、独占禁止法上問題となり得る。
● 優越的地位の濫用の観点から:優越的地位にある発注者(使用者)が課す秘密保持義務や競業避止義務が不当に不利益を与えるものである場合には、独占禁止法上問題となり得る。
また、競争政策上望ましくない行為として、以下が挙げられています。
● 対象範囲が不明確な秘密保持義務や競業避止義務は、役務提供者に対して他の発注者(使用者)との取引を萎縮させる場合があるので、望ましくない。
なお、フリーランスを対象にした場合については、2021年、内閣官房成長戦略会議事務局、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省の連名で公表された「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」で、次のような見解が示されています。
● フリーランスとして業務を行っていても、実質的に発注事業者の指揮命令を受けて仕事に従事していると判断される場合など、現行法上「雇用」に該当する場合には、労働関係法令が適用される。
● 取引上の地位がフリーランスに優越している発注事業者が、一方的に当該フリーランスに対して合理的に必要な範囲を超えて秘密保持義務、競業避止義務、あるいは専属義務を課す場合に、当該フリーランスが、今後の取引に与える影響などを懸念して、それを受け入れざるを得ない場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり、優越的地位の濫用として問題となる(独占禁止法第2条第9項第5号ハ)