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なぜ回転寿司は好かれるのか?その魅力を支えるAIをはじめとした技術とは

「回転寿司」と聞いて、何を思い浮かべますか。
色とりどりの寿司ネタが目の前を流れる様子、お気に入りの一皿を選ぶ楽しさ、そして手軽に本格的な寿司を楽しめる魅力。
しかし、その裏側には私たちが想像する以上の最新技術が隠れています。
今回は、誰もが知る回転寿司の魅力と、その魅力を支える意外な技術の組み合わせについて探っていきます。美味しい寿司を楽しみながら、その背後にある革新的なテクノロジーの世界をのぞいてみましょう。

回転寿司の魅力

回転寿司の魅力とは何だと思いますか。
もちろん人それぞれ魅力に感じるところは違うと思いますが、筆者は「エンターテインメント性が高い」という点だと感じています。
筆者が感じる回転寿司のエンターテインメント性は以下の通り。

視覚的な楽しさ

まず目を引くのは、レーンの上を回る色とりどりのお皿です。自分が注文したネタ以外にも、他のお客さんが注文したネタが目の前を通り過ぎる様子を見て「こんなネタもあるんだ」「これも食べてみたい!」と思うことも多々あります。商品を顧客に届ける間に、注文者以外の顧客にまで訴求できるとは、「回転寿司とはなんと効率的なビジネスだろうか」と毎回思います。
店舗によっては、店内で寿司職人が握る様子を見られるのも楽しいですし、過去には“特急列車”が注文したお寿司を運んでくるサービスも実施されていました。*1

顧客を飽きさせない仕掛け

好きなネタを自由に選べるのも大きな魅力です。寿司だけでなく、サイドメニューやデザートまで豊富に用意されていて、フライドポテトや麺類、デザートなど、本当に幅広い年代の消費者が楽しめるラインナップになっています。小さい子供がいても安心して食事を楽しめるよう、キッズメニューや子供用の椅子も用意されているお店も多くなっています。
そして、注文したメニューが届くまでの時間や、食べ終わったあとも楽しませてくれます。スシローでは図1のようにネタが流れる様子を映す大型のモニターが設置され、注文額に応じてゲームが楽しめる店舗もあります。
くら寿司では空き皿をテーブル備え付けの投入口に規定の枚数入れるとゲームに挑戦できます。*2, *3

図1:スシローの大型モニター「デジタル スシロービジョン」
出所)株式会社FOOD & LIFE COMPANIES「スシロー、デジロー設置店舗をさらに拡大!6月上旬より9月末にかけて16店舗 順次導入」
https://food-and-life.co.jp/news/7640/

実は、スシローの大型モニター設置は、来店客の迷惑行為を受け、常時商品をレーンに流すサービスを中止したことへの対策です。*4
くら寿司の空き皿投入口は、「たくさん空き皿が積み上げられているところを見られるのが恥ずかしい」という顧客の声に対応したものでした。*3
ただ課題を解決するだけでなく、顧客を楽しませるエンターテインメントに昇華させている点が流石です。

スシローデビューで衝撃

回転寿司業界売上No.1のスシロー。*5
筆者のスシローデビューはほんの3~4年前です。それ以前にも回転寿司店には行ったことがありましたが、その経験も10年近く前だったように記憶しています。
筆者がスシローデビューして驚いたのが、そのシステム化された営業スタイルでした。入店から着席、食事が終わるまで、スタッフの方との接触はほぼなく、精算金額の確認をしてもらうだけ。その確認も瞬く間に終わり、会計もセルフです。
「スタッフの方が忙しそうなのでいつ声をかけようか」とタイミングをうかがうといったストレスがなく、「なんて気軽に楽しめるんだ!」と衝撃でした。
来店客の人数に対して接客をするスタッフの数がかなり少なく、合理化されたシステムに非常に驚いたことを今でも覚えています。20年以上前、筆者も飲食店でアルバイトをしたことがありますが、その頃の感覚とは全く違うものでした。
筆者はたまたまスシローで回転寿司の近代化に驚愕しましたが、どの回転寿司チェーン店に行ってもそのシステムの進化に驚いたことでしょう。

身近なところで技術革新は起こっているかも

少し話はそれますが、みなさんはAI(Artificial Intelligence:人工知能)を使ったことはありますか。
Open AIのChatGPTの登場により、AIという単語が身近になった印象があります。Chat GPTは生成AI(Generative AI)といい、さまざまなコンテンツを生成できます。*6
一方で、総務省がまとめた2024年度版情報通信白書によると、図2にあるように日本の生成AIの利用状況は欧米と比較すると低調です。*7

図2:生成AIの利用状況
出所)総務省「令和6年版情報通信白書(概要)」P6
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r06/summary/summary01.pdf

「最新のデジタル技術の活用は難しそう」と言うイメージがあるのかもしれません。筆者も新しい技術を使う場合、「理解できるのか」「使いこなせるのか」と思って抵抗を感じてしまいます。
しかし、みなさんも知らず知らずのうちに最新技術の恩恵を受けているかもしれません。

回転寿司を支えるAI

回転寿司店では、私たちが気づかないところでAIが活躍しています。
例えば、銚子丸が導入した自立歩行型の配膳ロボットは、AIが店内のレイアウトを学習し、センサーで障害物を避けながら効率的に移動します。ロボットの機体に料理の収納スペースを備え、ロボットが配膳を完了させます。*8(図3)

図3:AI配膳ロボット
出所)株式会社アルファクス・フード・システム「グルメ回転寿司『すし銚子丸』自律歩行型AI配膳ロボットを試験導入開始 」P2
https://www.afs.co.jp/category/ir/PDF/200907_n10268.pdf

さらに、AIは店舗の安全管理にも一役買っています。くら寿司では、回転レーンに流れる寿司への不審な行為をAIで検知するシステムを全国の店舗に導入しました。不審な行為が検知されると、レーンに戻された皿を取り除いたり、お客様に声をかけたりするなどの対応を取ります。*9(図4)

図4:AIカメラシステムの仕組み
出所)くら寿司株式会社「業界初!AIテクノロジーを活用した『新AIカメラシステム』 3月2日(木)から全国のくら寿司にて導入開始 ~回転レーン上での寿司カバーの異常を検知し迷惑行為を防止 お客様の不安解消と回転寿司文化の存続を目指す~」
https://www.kurasushi.co.jp/author/004447.html

スシローでは、需要予測の分野にもAIの活用を進めています。スシローは約600もの営業店舗を抱えています。この需要を人間が個別に予測するのは困難ですが、AIならば天候、顧客のニーズなど、多様な要因を考慮した精度の高い予測が可能になります。AIを活用すれば、フードロスの削減やコスト削減につなげることが期待できるのです。*10(図5)

図5:AI需要予測のメリット
出所)株式会社FOOD & LIFE COMPANIES「SUSTAINABILITY REPORT 2023」P10
https://food-and-life.co.jp/wp-content/uploads/pdf/sustainability/report2023.pdf

このように、回転寿司店では配膳、安全管理、需要予測など、様々な場面でAIが活用されています。私たちがお手頃価格で美味しい寿司を楽しめるのも、こうした最新技術の支えがあってこそなのです。

寿司×AIの意外な関係

回転寿司は、その視覚的な楽しさや豊富なメニュー、エンターテインメント性の高さから、多くの人々に愛される外食産業の代表格となっています。しかし、その魅力の裏側には、私たちが気づかないところで活躍するAI技術があります。
一見すると単純な「寿司を食べる」という行為の背後に、高度なテクノロジーが存在しているのです。
このような一見畑違いに思える分野の融合は、実は回転寿司業界に限ったことではありません。
例えば、農業分野では、AIを活用した精度の高い気象情報の解析や収穫時期の判定が行われています。*11
建設業界では、AIを用いた設計支援や工事現場の安全管理が進んでいます。*12, *13
このように、AIとさまざまな分野の融合は今後ますます加速していくでしょう。私たちの生活のあらゆる場面で、気づかないうちにAIが活躍する時代がすぐそこまで来ています。
私たちが美味しい寿司を気軽に楽しめるのも、こうした最新技術の支えがあってこそ。
筆者もただ単に「回転寿司ってすごい!」と感動するだけでなく、新しいサービス、便利なサービスの裏にはどんな技術が隠れているのか思いを巡らせつつ、美味しいお寿司を堪能したいと思います。

参照・引用を見る

田中 ぱん

学生のころから地球環境や温暖化に興味があり、大学では環境科学を学ぶ。現在は、環境や農業に関する記事を中心に執筆。臭気判定士。におい・かおり環境協会会員。

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