来たるべきAI時代にエネルギー危機を引き起こさないためにも、データセンターのグリーン化や省エネが進められています。
AmazonやGoogleなどの既存のデータセンター事業者は、再生可能エネルギーの導入を進めることを表明しており、すでに取り組みを始めています。
国内のデータセンターでも、太陽光パネルの設置や自然光採光の活用などの取り組みを進め、環境負荷軽減を目指しています。*12
2021年に閣議決定した「地球温暖化対策計画」では、新設データセンターの30%省エネ化と再生可能エネルギーの導入を目標としています。(図7)*12
図7:デジタル機器・産業に対する省エネ・グリーン化目標
出所)環境省「データセンターによる再エネ利活用の促進に関するアニュアルレポート」p.22
https://www.env.go.jp/content/000146667.pdf
地域の再生可能エネルギーを活用したデータセンターのグリーン化は、国内外ですでにさまざまな実績があります。
Appleでは、オランダにある自社データセンターで再生可能エネルギー100%での稼働を続けています。
さらに、地域の太陽光発電や風力発電の電源開発にも資金を投入し、再生可能エネルギーの利活用を促進しています。*12
群馬県富岡市にある株式会社アガタでは、自社の強みである太陽光発電設備と蓄電池システムを組み合わせて、データセンターのゼロエミッション化を目指しています。
蓄電池を利用することで、出力に波のある太陽光発電の余剰電力を非常用電源として活用し、地域のデータセンターへの電源供給を安定化する取り組みです。(図8)*12
図8:富岡市上黒岩太陽光データセンター
出所)環境省「データセンターによる再エネ利活用の促進に関するアニュアルレポート」p.39
https://www.env.go.jp/content/000146667.pdf
蓄電池導入の課題となるコストに関しては、非常用電源として活用したり、昼間の余剰電力や夜間の安価な電力を組み合わせることで最適化しています。
データセンターの省エネに関しては、施設ごとの対策だけではなく、社会全体で高効率データセンターを活用するという取り組みもあります。
古いサーバーを最新のデータセンターに移設するサーバー集約や仮想化技術によるエネルギー効率化で、大幅な消費電力の削減が期待できます。(図9)*13
図9:高効率データセンター活用による社会全体の省エネ
出所)グリーンIT推進協議会「データセンタの省エネ/グリーン化推進に向けて」p.6
https://home.jeita.or.jp/greenit-pc/sd/pdf/ds1.pdf
今後急激に進化していくと予測されている生成AIですが、エネルギー不足がその進化にストップをかけてしまう可能性もあります。
そもそも、近年の日本では、政府が電力需給ひっ迫による節電要請をおこなうなど、電力不足が深刻化しています。
そんな状況のなかでの生成AIによる電力需要増大は、日本のエネルギー戦略における喫緊の課題とも言えるでしょう。
驚くべきスピードで進化する生成AIは、社会構造を根本から変えるポテンシャルをもっています。
そのポテンシャルを存分に発揮できる社会が実現できるかどうかは、生成AIを支えるデータセンターの省エネ化・グリーン化が重要な鍵を握っているかもしれません。