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注目度抜群の「データサイエンティスト」の仕事とは? 気になる年収や必要なスキルについてチェックしよう

令和の今、多くのビジネスシーンでデータドリブン(=データ駆動型)な判断が求められるようになっています。

自社の製品やサービスがどのように評価されているのか、社会ではどのような製品やサービスに対するニーズが高いのか。業務をもっと効率化できる方法があるのかどうか。
そんな問題の解決を「勘と経験」に頼るのではなく、データという客観的事実から導き出すのがデータサイエンティストの仕事です。

ビッグデータという概念の広がりやAIの発達と相まって、ニーズの高いデータサイエンティストは年収も高くなっています。

そんなデータサイエンティストの仕事や待遇などについて、今回は見ていきましょう。

データサイエンティストという仕事が生まれた背景

データサイエンスという概念が広く認知されるようになったのは2010年代以降です。以下のような経緯があります*1。

・2000年代初頭:WindowsやSaaS(Software-as-a-Service)の普及により、個人のパソコン所有が一般的になり、データのやり取りが急増

・2006年:オートエンコーダ(自己符号化器)を使用したディープラーニングが登場し、人工知能の進化が飛躍的に加速

・2008年:Googleなどで、データサイエンティストと自称する人々が登場し、そのスキルや職務内容が議論されるように

・2010年:データ転送量が大幅に増加し、それに伴い「ビッグデータ」という言葉が提唱される

「ビッグデータ」の時代になり、データの分析・解析に特化した「データサイエンティスト」という新しいポジションの重要性が増してきたともいえるでしょう。
データサイエンティストとは、「ビッグデータ」という、これまでは未知の存在だったものと向き合い、その使い手となる職業です。

データといっても、放っておけば勝手に取れるというわけではありません。また、取るだけでは何の役にも立ちません。

・どんなデータを取るべきか
・どんな手法でデータを取るべきか
・取ったデータをどう処理すべきか、加工すべきか
・得られたデータは信頼できるものかどうかの判断

というように、人の介入がなければ、データは存在するだけでは無価値なものなのです。
多くの角度から「データ」の扱いを熟知し、新しい発見をもたらしていくのがデータサイエンティストです。

「データ」の持つ力

「データ分析・解析」というとマーケティングや業務効率化といった項目が思いつきやすいものですが、データ分析・解析は幅広い役割を担っています。
ユニークな事例をご紹介します。

世界的銘酒「獺祭」はデータで生まれている?

意外な分野でのデータ活用としてよく挙げられるのが、世界的にも有名な日本酒「獺祭」を製造している旭酒造です。2020年にサザビーズオークションに出品された限定品は、1本約115万円という高値で落札されました*2。

(出所:「ニューヨークで115万円。日本一の山田錦で造った獺祭が落札。」旭酒造)
https://www.asahishuzo.ne.jp/news/info/005181.html

実はこの「獺祭」の製造過程に杜氏はいません。経営危機の時に逃げられてしまったというのが実情ですが、旭酒造は素早くデータによる酒造方法を確立しました。

酒造りの全行程で詳細なデータを取り、検査室のパソコンに蓄積して分析しながら製造工程の最適解を見つけてきたのです。
例えば日本酒は、米を麹で糖化させる工程などを経て「もろみ」にして、それを酵母で発酵させて造りますが、そこには「BMD曲線」と呼ばれる日数と糖度の関係があります。
そのための微妙な温度管理や水の追加タイミングのノウハウを、データ分析から得ています*3。

結果、杜氏がいるいないにかかわらず1年間いつでも仕込みを始められ、常に均一の品質のものを販売し続けています。

データを取ってみたら判明した意外な事実

自分の会社の製品やサービスを繰り返し長く使ってくれる人。それは企業にとってありがたい存在と言えるでしょう。
マーケティングの世界でも「CLTV(Customer LifeTime Value)=顧客生涯生産価値」という指標が重視されています。

しかし繰り返し使ってくれる人の中にも、「有害な」顧客が隠れている可能性があります。
それをデータで暴き、経営改善につなげたという企業事例があります。

世界最大の家電販売店である米ベストバイ社は返品に対して100%返金というサービスを実施していました。

しかし顧客の行動を分析した結果、一部の顧客がセールで購入した商品を返品し、通常価格での返金を受けることを繰り返している事実を発見したのです。それだけでなく彼らは、返品後しばらくして店を訪れ、「開封済み」として20%割引で売られている、もとは自分が返品した商品を再購入していたのです*4。

また、コンチネンタル航空(2010年にユナイテッド航空と経営統合)では、家族の不幸に対して急いで割安の航空便を手配するサービスを実施していましたが、1回の「不幸」で44件もこのサービスを受けていたユーザーがいたことがわかりました*5。

こういった事実の発見は、営業方法の改善につながります。

データサイエンティストの年収は?

何のためのデータを取り、ビジネスの場所にどう活かすのか。これはひとえにデータサイエンティストのアイデア力がものを言う世界かもしれません。逆に言えば、アイデアの数だけさまざまなビジネスチャンスを生み出すことができる仕事でもあるのです。

では、データサイエンティストの就労データをみていきましょう。

まず、厚生労働省の統計ではこのようになっています。

データサイエンティストの就業状況
(出所:「データサイエンティスト」厚生労働省jobtag)
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/323

収入についてもう少し詳しくみてみましょう。

転職サイト「doda」が2022年9月~2023年8月の1年間に同社サービスのユーザーを対象に実施した調査によれば、全体の平均年収が414万円であったのに対して「データサイエンティスト」は576万円という結果になっています*6。

全体平均より収入は高いと言えるでしょう。

データサイエンティストとして必要な勉強は?

では、データサイエンティストになるには、どのような勉強をしておくべきでしょうか。

入職前後の訓練や実務経験

データサイエンティストとして働いている人が必要と考える「就職前の実務経験」については、42.6%が「特に必要ない」となっています*7。

また、新卒での就職となると訓練時間が気になることかと思いますが、これも、特に考えすぎる必要はなさそうです。

「データサイエンティスト」の入職前の訓練期間
(出所:「データサイエンティスト」」厚生労働省jobtag)
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/323

逆に、就職後独り立ちするまでに2~3年かかるという見方が多く*8、入社後に勉強することが多いとも言えるでしょう。

確かに、まず就職先の業界に馴染む、業界の習慣を知るということも必要です。

スキルアップと年収アップの関係が見えやすい

また、データサイエンティストは、各種IT系の資格取得状況によって年収に差が出るようです。独立行政法人情報処理推進機構が管理している「ITSS(=ITスキル標準)」に応じて、データサイエンティストの年収はこのように変化しています。

ITSSレベルごとの年収
(出所:「データサイエンティスト」厚生労働省jobtag)
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/323

こうした数字が公表されているのは、就職後のスキルアップ、ステップアップの目標が見えやすいことでもあると言えるでしょう。

幅広い好奇心がベースに

ここまでデータサイエンティストの仕事について見てきましたが、データサイエンティストの仕事は「ビッグデータ」というものに対する「ユニークな切り口」もまた必要とされます。

というのは、データサイエンティスト自身が新しい気づきを持たなければ、どれだけ材料データがあっても新しい発見には繋がらないからです。

よって、企画力も必要なのがデータサイエンティストだと言えるでしょう。

企画力は、幅広い好奇心があってこそ生まれるものであり、好奇心という点こそAIと人間が一線を画すところでもあるでしょう。

他人が気づかないようなことが気になる、気になったら調べないと気がすまない。

そんな性格の持ち主には、より適した職業かもしれません。

参考資料

清水 沙矢香

2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。
取材経験や各種統計の分析を元に多数メディアに寄稿中。

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