近年、”ブランドコミュニティ” の重要性が大きく注目されています。
なかでも成功事例としてよく取り上げられるのが、ハーレーダビッドソンのオーナー組織「H.O.G.(Harley Owners Group)」です。
H.O.G.はいかにしてバイク乗りを魅了し、人生を変えるような価値を提供しているのでしょうか。
この記事では、その秘密に迫りながら、ブランドコミュニティについて考えたいと思います。
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HOME > コラム > バイク乗りの人生を変える「ブランドコミュニティ」の秘密に迫る。
近年、”ブランドコミュニティ” の重要性が大きく注目されています。
なかでも成功事例としてよく取り上げられるのが、ハーレーダビッドソンのオーナー組織「H.O.G.(Harley Owners Group)」です。
H.O.G.はいかにしてバイク乗りを魅了し、人生を変えるような価値を提供しているのでしょうか。
この記事では、その秘密に迫りながら、ブランドコミュニティについて考えたいと思います。
「ブランドコミュニティ」という言葉自体、初めて耳にしたという方もいるかもしれません。簡単に背景からご紹介します。
ブランドコミュニティとは、特定のブランドを愛好するファン同士のつながりを通じて形成される、コミュニティのことをいいます。
近年のマーケティング界では、コミュニティが重視される傾向にあります。
というのは、ブランドに対するファンの愛着や帰属意識を高め、長期的な関係性を築くことが、ビジネス上の大きな価値につながると認識されているからです。
「1度買って終わり」ではなく、そのブランドが発するメッセージや価値観に共感するファンと末永くつながり続けることが、ビジネスの核心となっています。
このような状況において、重要な役割を担うのが「ブランドコミュニティ」です。
ブランドコミュニティを通じて、ファンは同じ価値観を共有する仲間と出会い、ブランドとの絆を深めていきます。
企業にとっても、コミュニティはファンとの直接的な接点となります。ファンの声に耳を傾け、要望や期待を汲み取る貴重な機会となるのです。
「具体的に、ブランドコミュニティってどれ?」
という疑問が浮かんだかもしれません。
ブランドコミュニティの例としてよく挙げられるのが、ハーレーダビッドソンのオーナー組織「H.O.G.」です。
時をさかのぼること1983年、ハーレーダビッドソンは経営危機に直面していました。
しかし、その25年後、同社は見事に復活を遂げ、78億ドルの価値を持つ世界トップ50のブランドの仲間入りを果たしたのです。
この驚くべき逆転劇の立役者となったのが、ハーレーダビッドソンのブランドコミュニティ戦略でした。*1
同社は、ハーレーの世界観に心酔する熱狂的なファンたちを組織化し、「H.O.G.(Harley Owners Group)」というコミュニティを設立したのです。
H.O.G.は、世界中に会員を擁する巨大なコミュニティへと成長しました。ハーレー乗りの間では一種のステータスシンボルとして認知され、多くのファンを魅了し続けています。
では、H.O.G.はなぜ世界中のハーレー乗りを魅了し、熱狂的なファンを生み出し続けているのでしょうか。
その理由としては、ハーレーダビッドソンという唯一無二のブランド世界観、バイクへの情熱を共有する仲間との絆、そして特別な体験が挙げられます。
以下で詳しく見ていきましょう。
H.O.G.が多くのファンを魅了する大きな理由のひとつが、ハーレーダビッドソンという唯一無二のブランドが持つ独特の世界観です。
自由、冒険、反骨といったスピリットを体現するそのブランドイメージは、多くのバイク乗りの心を捉えて離しません。
H.O.G.は、そんなハーレーダビッドソンの世界観を余すところなく体験できる場となっているのです。
どこまでも続く道を、愛車で自由に駆け抜ける爽快感や、初めて訪れる絶景スポットでの感動など、ハーレーならではの体験がそこにはあります。
H.O.G.の活動を通じて、そうした特別なハーレーの世界を味わえることが、ファンの心を強く惹きつけています。
“愛車とともにある風景が格別の価値を持つ” ことは、バイク乗りの方なら、深く共感できるのではないでしょうか。
もうひとつ、バイク乗りたちの物語に欠かせないのは、バイクへの情熱を共有する仲間との絆です。
H.O.G.には「チャプター」と呼ばれる交流グループがあり、チャプターに所属することで、深いつながりが生まれます。以下は公式サイトからの引用です。
H.O.G.チャプターとは?
チャプターメンバーはライディングへの情熱を分かち合い、ライディングを支援する様々な活動を行っています。グループライディング、安全運転講習会、ラリー、ナショナルH.O.G.ラリー、チャプターツーリングなど、多岐にわたるライディングイベントがあります。ライディングに焦点を当てていますが、慈善活動の一環としてイベントに参加したりするグループも多く存在します。チャンスは無限にあります。次に新しいアクティビティのアイデアを生み出すのはあなたかもしれません。*2
バイクに魅了された者同士、愛車の自慢話に花を咲かせ、ツーリングの思い出を分かち合う。そうした交流から芽生える一体感は、かけがえのないものです。
仲間との絆は、ときに人生の困難を乗り越える支えともなります。
H.O.G.のメンバーたちは、お互いに助け合う生涯の友になっていることも少なくありません。
そして、H.O.G.が提供する特別な体験は、人生を大きく変える力を秘めています。
雄大な自然の中をハーレーで駆け抜けるツーリングなどを通じて、日常では味わえない感動に出会えるのです。
世界中で開催されているラリー&イベントについては、H.O.G.公式サイトの以下ページに掲載されています。
H.O.G.ラリー&イベント(Harley-Davidson JP)
以下に一例を引用します。
2024年5月15日~24日
TOUR OF VALOR H.O.G.ツーリングラリー
フロリダ州ペンサコーラからバージニア州アーリントンまで
この10日間のH.O.G.ツーリングラリーは、一言で表せば「英雄にふさわしい」ラリーであり、国内で最も有名な軍事博物館に立ち寄ります。 このユニークなラリーはフロリダ州ペンサコーラから始まり、ワシントンDC郊外のバージニア州アーリントンで、「Rolling to Remember」開催前日に終わります。*3
「ハーレー乗りである」というアイデンティティを、仲間とともに全身で体現する。そんな濃密な体験は、人生観を揺さぶるほどのインパクトがあります。
特別な体験は、ライダーたちの心に深く刻まれ、人生を豊かにする大きな糧となっていくことでしょう。
H.O.G.の事例から学べるのは、ブランドコミュニティ形成の真髄ともいうべきエッセンスです。
それは表層的な施策の羅列ではなく、メンバーの心の奥底に響く、本質的な価値の提供といえます。
ブランドコミュニティの形成において、SNSキャンペーンやノベルティグッズの配布だけでは、深い絆は生まれにくいでしょう。
なぜなら、これらの施策は一方的なメッセージの発信に偏りがちで、ファンとの真の対話や共感を生み出すことは難しいからです。
加えて、単発的なイベントやキャンペーンでは、“末永く続く関係性” を目指すことも、困難です。
大切なのは、一過性の盛り上がりや話題性ではなく、メンバーの心の奥底に響く本質的な価値を提供することです。
メンバーの心の奥底に響く本質的な価値とは何でしょうか。
それは、ブランドを通じて得られる感動体験や、人との絆だと考えられます。
H.O.G.が提供しているのは、ハーレーという共通項で結ばれた仲間との一体感、そして生涯忘れられない特別な思い出です。
愛車を介して、人生をより豊かにする価値が、そこにはあります。
「どのような体験を創出するのか?」を考えるとき、ブランドの根本的な存在意義が問われます。
言い換えれば、「何のためにものづくりをしているのか?」という問いです。
H.O.G.の成功は、ハーレーダビッドソンというブランドの持つ「自由と冒険のスピリット」を体現できている点に尽きるといえるでしょう。
バイクを通じてかけがえのない仲間と出会い、人生の豊かさをともに味わう。そんな格別な体験を提供し続けることで、熱狂的なファンを生み出しています。
私たちは、ものづくりに携わるとき、ただ物理的なプロダクト(製品)を作っているわけではありません。
人々の人生に、いかなる価値を提供できるのか。どのような世界観を体現し、人と人とを結びつけられるのか。
その根源的な問いに真摯に向き合うものづくりの在り方こそが、ブランドコミュニティ形成の本質ともいえるのです。
今回は、ビジネス戦略としてのブランドコミュニティ成功事例として、H.O.G.をご紹介しました。
一方で、戦略として企業が仕掛けていなくても、自然発生的にコミュニティが形成されている製品・サービスも存在します。
それらに共通するのは、人々の情熱に火をともし、人生を彩る特別な体験を提供している点です。
ものづくりとは、かけがえのない価値を生み出す営みにほかなりませんが、コミュニティの形成は、その営みが成功している証なのかもしれません。
三島つむぎ
ベンチャー企業でマーケティングや組織づくりに従事。商品開発やブランド立ち上げなどの経験を活かしてライターとしても活動中。