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自動運転に関する法規制の現状|レベル4への対応状況など最新の法律を弁護士が解説

自動運転は、生活を一変させる可能性を秘めた革新的技術です。その一方で、自動運転に関するテクノロジーの発展度合いに応じて、安全性を十分に確保するための法整備が欠かせません。

2023年4月に施行された改正道路交通法によって「レベル4」が解禁されるなど、自動運転に関する法整備は着々と進んでいます。
本記事では、現行の自動運転に関する法規制や、今後の法整備の展望などをまとめました。自動運転の現在および将来に関心のある方は、本記事を参考にしてください。

※本記事は2024年4月19日時点の情報を基に執筆しています。

自動運転の5段階のレベル|現在はレベル4まで解禁

自動運転は、その機能に応じて5段階のレベル(レベル1~レベル5)に分類されています*1。

  機能(概要) 機能(詳細)
レベル1 運転支援

システムが前後(縦方向)または左右(横方向)のうち、いずれかの車両制御を実施
(例)
・自動ブレーキ
・前の車に付いて走る(ACC)
・車線からはみ出さない(LKAS)

レベル2 特定条件下における自動運転

システムが前後(縦方向)および左右(横方向)の車両制御を実施
(例)
・車線を維持しながら前の車に付いて走る(LKAS+ACC)

・高速道路での自動運転(遅い車を自動で追い越す、分合流を自動で行う)

レベル3 条件付自動運転

システムがすべての運転タスクを実施、ただし介入要求があった場合はドライバーが対応する

レベル4 特定条件下における完全自動運転

過疎地域や高速道路などの特定条件下において、システムがすべての運転タスクを実施(ドライバーの介入は不要)

レベル5 完全自動運転

常にシステムがすべての運転タスクを実施

2024年4月現在の法制度においては、レベル4の「特定条件下での完全自動運転」が一部解禁されています。
現時点では無人バスなどに限り完全自動運転にて運行することができますが、今後は高速道路などでも完全自動運転が認められるようになる見込みです。

自動運転の普及状況

法制度上はレベル4(の一部)まで自動運転車の運行が可能となっていますが、日本国内における普及はまだまだこれからです。

レベル2までの自動運転(運転支援)システムは、幅広い車種に搭載されています。

一方、レベル3の条件付自動運転は、国産車ではホンダの「LEGEND」、外国産車ではメルセデスベンツのSクラス(有料オプション)に採用されていますが、導入車種は限られている状況です。

レベル4の特定条件下における完全自動運転は、現時点では自家用乗用車による運行が想定されておらず、商業運行も未だ十分に普及していません。

しかし、2023年5月から福井県永平寺町において、約2kmの距離を10分程度で走る無人自動運転サービスが運行開始となりました。
また2024年夏以降に、トヨタ自動車が中心となる共同出資会社がレベル4による自動運転サービスを始める旨が報道されるなど*2、レベル4の実用化に向けた動きが加速しています。

2023年4月に解禁|レベル4の自動運転に関する法規制

レベル4の自動運転は、2023年4月1日より施行された改正道路交通法によって解禁されました。
レベル4の自動運転に関する現在の法規制の概要として、以下の各点を解説します。

  • (1)レベル4の自動運転は許可制

  • (2)レベル4による実際の運行について適用される規制

  • (3)レベル4の自動運転中に事故が発生した場合の法的責任

レベル4の自動運転は許可制

レベル4の自動運転車の運行(=特定自動運行)に当たっては、運行場所を管轄する公安委員会の許可を受けなければなりません(道路交通法75条の12第1項)。

特定自動運行の許可に関する審査は、車両設備や運行者における体制整備、地域住民の利便性や福祉などの観点から行われます(同法75条の13)。

レベル4による実際の運行について適用される規制

実際にレベル4の自動運転車を運行する際には、以下の事項などを遵守しなければなりません。

(a)運行計画の遵守
公安委員会の許可を受けた特定自動運行計画に沿い、かつ公安委員会が付した許可条件を遵守して運行しなければなりません(道路交通法75条の18)。

(b)運行業務従事者に対する教育
レベル4による自動運行に従事する者に対して、実施すべき措置を円滑・確実に実施させるための教育を行わなければなりません(同法75条の19第1項)。

(c)特定自動運行主任者の選任・現場措置業務実施者の指定
レベル4による自動運行の管理を行う「特定自動運行主任者」を選任しなければなりません(同条2項)。
また、自動運行車両に特定自動運行主任者が同乗しないときは、現場において必要な措置を行う「措置業務実施者」を指定する必要があります(同条3項)。

(d)特定自動運行主任者による運行管理
特定自動運行主任者は、自動運行車両に乗車するか、または映像・音声の確認装置を車両に備え付けた上で、その管理場所に配置しなければなりません(同法75条の20第1項)。

(e)運行終了措置など
特定自動運行主任者は、自動運行車両に備え付けられた映像・音声の確認装置が正常に作動していないときは、運行終了措置を講じなければなりません(同法75条の21第1項)。
また、レベル4による自動運行が終了した場合において、緊急車両が接近しているときや違法駐車に当たるときなどには、車両の移動などの措置を講じる必要があります(同法75条の22)。

(f)交通事故発生時の措置
レベル4による自動運行車両に関して交通事故が発生した場合には、消防機関への通報、現場措置業務実施者の派遣、警察官に対する報告、危険防止措置の実施、負傷者の救護などを行わなければなりません(同法75条の22)。

レベル4の自動運転中に事故が発生した場合の法的責任

レベル4による自動運行車両には運転者が存在しないため、交通事故について運転者の法的責任を問うことはできません。

その一方で、以下の者はレベル4による自動運行車両の交通事故について損害賠償責任を負う可能性があります。

損害賠償責任を負う可能性がある者 損害賠償責任の法的根拠
特定自動運行主任者 不法行為(民法709条)
現場措置業務実施者 不法行為(民法709条)
自動運行の運営会社

使用者責任(民法715条)
運行供用者責任(自動車損害賠償保障法3条)

事故車両の製造者(自動車メーカー) 製造物責任(製造物責任法3条)

自動運転に関する法規制の将来展望

レベル4の特定条件下における完全自動運転については、近年中に高速道路などでも解禁されることが見込まれています。実現すれば、家庭における乗用車の形が変化していくことでしょう。
とはいえ、実際の普及がどの程度のスピードで進むのかについては、レベル4の機能を搭載する車両の販売価格などにもよるため、現時点では未知数です。

将来的にはレベル5の自動運転が解禁され、あらゆる場所においてハンドルを握ることなく自家用車に乗れる日が来ると思われます。
しかしそこに至るまでには、すべての運転操作を委ねられるだけのシステムに対する信頼や、交通事故発生時における法的責任に関する整理などのハードルをクリアする必要があります。

日本においては、自動運転に関する法整備が先行して行われ、その後徐々に実際の普及が進んでいくという流れが見られます。技術の発展を促す観点からは、このような流れは好ましいものと言うべきでしょう。
法制度と技術がバランスよく発展していけば、自動運転によって人々の生活はいっそう便利になることが期待されます。

参考資料

阿部 由羅

ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。注力分野はベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続など。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆・監修も多数手がけている。

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